ナウシカとクシャナのポスター。
劇場で舞台を見たかったのですが東京に行くことができず、残念に思っていた所にディレイビューイングの存在を知り。見るしかないと。
感想。筆舌につくし難い素晴らしさでした。
漫画の「風の谷のナウシカ」を歌舞伎で朝夜公演通しで7時間の舞台化。
ディレイビューイングも前後編に分けられていました。
最初はやっぱり歌舞伎で表現されるナウシカに違和感があります。
ナウシカを演じているのが尾上菊之助さんなので、体格とか声とか、少女ではないですし。アニメで見慣れているぶん、台詞や間も違いますし。
しかし、すぐにその違和感はなくなって、ナウシカの世界にのめり込んで観ました。
演技も演出も衣装も舞台装置も音楽も、何もかもが歌舞伎としてアレンジされていて、それが違和感なく、キャラクターや世界観を表現していました。
全てが日本的なものにアレンジされているので風の谷の民が完全に時代劇の村人Aみたいな感じなのとか、日本民謡のような歌を歌ったり、そういう世界観の変換や演出も面白いです。
それから台詞が当然、歌舞伎になっているので、現代口語がどう歌舞伎の台詞に変わっているか、ということが大変興味深かったです。
衣装や舞台装置や演出は見る前から楽しみな部分でしたが、言葉の言い換えについては見始めて初めて気づく面白さでした。日本語の勉強になります。
「風の谷のナウシカ」がそもそも、各キャラクターが魅力的なのですが、
歌舞伎でもそれがますます素晴らしく演じられていました。
尾上菊之助さんのナウシカは言わずもがな、
ナウシカの清廉さ、強さと脆さ、可愛らしさが詰まっていました。
片岡亀蔵さんのクロトワが本当にクロトワにしか見えないこととか、
市村橘太郎さんのミトじいもあまりにもミトじいそのものなこととか、
尾上右近さんのめっちゃ爽やかなアスベルとか。
蟲たちも、様々な表現方法で表され演じられていて次々と色んな蟲が登場して感心しっぱなしでした。
本当に全員もれなく良い。
そして中村七之助さんのクシャナ殿下。
強く気高く美しく猛々しい、翳りや繊細さも見えるクシャナ殿下がとにかく素敵でした。
クシャナの強さと美しさのオーラが全身から迸っていてこれ以上のクシャナはないと断言できるくらいにクシャナでした。
台詞回しや仕草も良いのですが(特に頭の動きと歩き方)、何より表情。
キュッと引き締めて噛み締めたような口元、口角だけを上げて笑う笑顔、相手を見据える目が、クシャナの様々な感情、激情を表しているようで惹きつけられました。
それから、坂東巴之助さんのミラルパ。とナムリス。
パワーと迫力とおどろおどろしい雰囲気で、邪悪な存在感が圧倒的でした。
歌舞伎を見た経験がほぼ無いので隈取の意味や価値を分かっていなかったのですが、ミラルパを見て、隈取を描く意味が分かりました。
隈取と演技の相乗効果で、迫力と威圧感がすごかったです。目の演技が際立っていました。舞台で魅せるための化粧としての効果をしっかりと感じることができました。
映像になっているとアップで撮影してあって細かな表情がよく見えるので、その点はディレイビューイングで見られて良かったです。
衣装の細部がよく見えるのも良いです。
和装にアレンジされた衣装デザインはとても美しかったです。
原作と全然違うのに、でもそのキャラクターをしっかり表していました。
「風の谷のナウシカ」が歌舞伎で上演されると知った時、絶対見たいと思いつつ、でも全くどういうものになるのか想像できなかったし、違和感はないのか、表現しきれるものなのか、王蟲や巨神兵はどうなるんだ?など色々信じられない気持ちにもなりましたが、
全てが完全に「風の谷のナウシカ」であり、歌舞伎でもあり、
その二つの要素かこんなにも違和感なくぴったりと合わさっていることに感動を覚えました。「歌舞伎」「舞台表現」というものの幅の広さ、奥行きを見せつけられました。
前編後編共に上映時間3時間半程度ですが、全く長さを感じませんでした。
舞台上に大量の水を降らせたり空中吊があったり階段落ちや連獅子があったり、色々な演出が詰め込まれていたのも、歌舞伎初心者には楽しかったです。
あまりにも重苦しくて原作の中盤以降が苦手なこともあり、後編は重くてしんどいかもしれないと思っていましたが、舞台転換も多く、あっという間でした。
正直なところ、見る前はライブでも無いのに前売りチケット前後編各4,000円は高くて、買い渋っていたのですが、本当に見られて良かったです。この金額でも有り余るくらい見る価値がありました。
もしいつかどこかの劇場で再上演されることがあったら、次こそ絶対に見に行きます。
(((願わくは、京都でしてくれないかなぁ。)))
クシャナ殿下、本当に美しすぎました。
Blu-ray化を激しく希望します。
それにしても、筆舌に尽くし難い割りに長い文章になりました。。。
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